第四次産業革命、少子高齢化が進行する中での労働リスク対策(労働安全衛生)はどうなるのか、労働安全衛生法の趣旨や運用実態を約2000頁の著書にまとめた三柴丈典先生(近畿大学法学部教授)が、これからの法運用を通して未来を展望します。
安衛法の歴史を概観できる絶好の機会であり、これからの産業保健体制の方向性を議論する機会ともなります。
ぜひご参加ください。
セミナーは3回に分けて実施されます。
前半2回(8/10、9/7)はウェビナーでのオンラインセミナーです。
最後3回目(10/19)はウェビナーと集合型セミナーのハイブリッドで運営されます。
全回を通して司会はJOHTA理事長(産業医アドバンスト研修会)浜口伝博氏が務めます。
【参加条件・開催形式】
正会員および無料会員は、3回のセミナー全てに無料で参加することができます。
ウェビナーURLは、当日JOHTAウェブサイト(イベントカレンダー)よりご入室ください。
URL:https://johta.jp/events/
第1回 8/10(土)14:00-18:00ウェビナー
第2回 9/7(土)14:00-18:00ウェビナー
第3回 10/19(土)14:00-18:00 ウェビナーと集合研修(東京会場)
終了後同施設内にて懇親会(希望者のみ)
-第3回(10/19)集合研修および懇親会について-
・会場 Meeting Space AP東京八重洲(東京駅から徒歩4分)
URL:https://www.tc-forum.co.jp/ap-yaesu/access/
・会場人数 25名 / 懇親会人数 25名
・会場参加および懇親会参加の方は下記URLからお手続きお願いします。
URL:https://johta.jp/sn-sah-law-application/
・募集開始 2024年6月25日(火)
・募集終了 2024年10月11日(金)10:00まで
・懇親会参加費用 7千円(税込)/人
(当日会場にて現金にて徴収します。領収書発行します。)
- 第1回の内容 -
・安衛法の歴史と特徴
・職域の化学物質管理と法
冒頭に、25年後の産業と労働の未来予測を述べたうえで、労働に伴うリスクと健康管理の将来について論じます。そのうえで、日本の労働安全衛生法の歴史と特徴について解説いたします。
既に生じた労災の再発防止策の義務化(危害防止基準の設定)を中心とするスタイルから、経営工学を応用した安全衛生管理体制の取り込み、危害防止基準の充実化、危険な機械の検査等の本質的安全化を進めたこと等で、重大労災を激減させたこと、対象とするリスクの複雑多様化を踏まえ、安全衛生管理体制に折々に必要な専門家を取り込むようになったこと等のほか、積み残し課題についても語ります。
また、最近の自律管理化を目指した職域の化学物質管理と法についても解説いたします。
ここでは、化学物質へのばく露被害を訴えた民事事件を複数紹介したうえで、ばく露被害防止のための法政策の展開を辿り、最後に近年の規則改正の実質、何が大切で何をすれば良いのかを論じます。
- 第2回の内容 -
・安全衛生の失敗学(1)~建設安全、化学安全の事件と得られる示唆~
・安全衛生の失敗学(2)~機械安全、放射線安全の事件と得られる示唆~
安衛法の条文に関係する監督指導状況、様々な事件の概要、判決、判決や未然防止策に関する専門家の意見を紹介し、安衛法の運用実態の来し方を振り返ります。
■東京高判昭和56年8月11日判例タイムズ459号143頁:偽装請負的な一人親方の被災案件につき、注文者の賠償責任が認められた例
■JCO東海村臨界事故事件水戸地判平成15年3月3日判例タイムズ1136号96頁:ほんらい厳格な製造工程規制下にあった核燃料加工業者が、散発的で短期日の注文を受け続ける中で安全管理が軽視され、極めて悲惨かつ重大な災害を生じ、原子力関係法と安衛法の双方で関係者が処罰された例
■建設アスベスト訴訟(神奈川)事件最1小判令和3年5月17日民集75巻5号1359頁:アスベストの製造や取扱いが禁止されるまでにばく露被害に遭った労働者や一人親方の国(とメーカー)に対する賠償請求が認められた例
■岩瀬プレス工業事件東京地判平成20年11月13日労働判例981号137頁:プレスの取扱い経験は十分にあったが、法令が求める特別教育を受けていなかった作業員が、安全装置を一部無効化して被災した事案につき、彼の被災時に作業主任者がいなかったなどとして、事業者の規則違反と賠償責任が認められた例
■東京地立川支判令和 3年12月16日WEST LAWジャパン:ビルの新築工事(メイン工事)とその一部(サブ工事)が分割発注された中、メイン工事の請負業者がサブ工事に対して上位の立場に立ち、ウレタンフォームが吹き付けられた壁に防火措置を講じず、構台杭の溶断を命じたため、引火して相当数の死傷者を出した例で、両業者に刑事責任が課された例
■東京電力ホールディングス(旧東京電力)ほか2社事件福島地いわき支判令和元年6月26日裁判所WEBサイト:福島第一原発事故にかかる緊急作業に従事した従業員が、実際には閾値を超えていなかったのにポケット線量計が鳴ったため、作業停止を求めたのに作業を継続させられたとして、作業を指示した業者に慰謝料を請求し、認められた例
その他、多くの例をご紹介します。
- 第3回の内容 -
産業保健の失敗学~産業医、健診、健康情報等に関する事件と得られる示唆~
主に産業保健に関係する安衛法第66条以下の条文の運用実態について、監督指導状況や事件、汲み取り得る示唆などを語ります。
■労働安全衛生法違反、有印私文書偽造、同行使被告事件・長崎地判平成18年10月3日労働判例923号93頁:会社の派遣担当者が、時間的余裕がないとして派遣労働者2名の雇入れ時健診を省略し、医師名義の健診個人票を偽造して派遣先に提出したこと等を踏まえ、執行猶予付の懲役刑が命じられた例
■真備学園事件岡山地判平成6年12月20日労働判例671号42頁:学校法人である被告が、雇用する教員の健診については、民間医療機関に胸部エックス線間接撮影と尿中糖と蛋白の検査を委託し、血圧は保健室に血圧計を用意して各教員の任意に委ね、健診個人票の作成も校医による健康管理も行わずにいたところ、悪性の高血圧症を基礎疾患に持つ高校教師が脳内出血で死亡したことを受け、安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任が認められた例
■東京海上火災保険・海上ビル診療所事件東京高判平成10年2月26日労働判例732号14頁:法定健診での肺がんの見落としにつき健診を実施した事業者が訴えられた事案で、一般企業での定期健診の実施は安全配慮義務の履行の一環だが、一般医療水準に照らし相当と認められる程度の健診を実施するか、それが可能な医療機関に委嘱すれば足りるとして、その過失責任が否定された例
■大東マンガン事件(植田満俺精錬所・守口労基署長事件)大阪地判昭和57年9月30日労働判例396号51頁(大阪高判昭和60年12月23日判例時報1178号27頁の原審):原告らが罹患したマンガン中毒等について、個人事業主の債務不履行責任と共に労働基準監督行政を行う国の国家賠償法上の責任が問われた事案につき、両責任が肯定された例(ただし、控訴審で国の責任が否定された)
■システムコンサルタント事件東京高判平成11年7月28日労働判例770号58頁:高血圧等の素因を持つ労働者が長時間労働後に脳幹部出血で死亡した事案で、会社が法定健診によって亡Aの高血圧の増悪を認識していた以上、「具体的な法規の有無にかかわらず、精神的緊張を伴う過重な業務に就かせないようにするとか、業務を軽減するなどの配慮をする義務を負う(事後措置義務を負う)べき」とした例
その他、長時間労働面接制度、ストレスチェック制度、感染症等や就業による増悪リスクのある疾患等に罹患した者の就業禁止を定める法第68条、健康情報等の取扱いに関する法第104条、第105条に関する事件、そこから汲み取り得る示唆なども論じます。
【講師について】
近畿大学 法学部
法律学科 法学研究科
教授 三柴 丈典氏
1971年生まれ。1999年に一橋大学大学院法学研究科博士後期課程修了、博士(法学)。2000年に近畿大学法学部奉職、2012年より教授。専門は、労働法、産業保健法。2011年4月から2021年3月まで厚生労働省労働政策審議会安全衛生分科会公益代表委員。2014年7月衆議院厚生労働委員会参考人。産業保健・安全衛生法に関する著作を多数執筆。2020年8月にUKのラウトレッジで研究書を発刊。2020年11月に日本産業保健法学会を設立し、現在副代表理事。