■ シリーズ
産業保健と法
全シリーズの詳細はこちら→ URL:https://johta.jp/occupationalhealth-and-law/
■ テーマ
パーソナリティに偏りを抱えた労働者の労務管理と法/ 精神障害者・難治性身体疾患り患者の復職と法
■ 日時
2023年5月20日(土)14:00~18:10
■ 講師
講師:
三柴丈典先生(みしばたけのり、近畿大学法学部教授)
■ 内容
講座3
パーソナリティに偏りを抱えた労働者の労務管理と法
とある法人で、パソコンスキルはあるが、職務や他のスタッフとの調和が難しい労働者を雇用したところ、ハラスメント訴訟に発展し、その後精神疾患で休職し、病気の症状は改善したが、産業医の判断により、法人が復職を拒否したところ、更に訴訟が生じたというケースを素材として、関連する法律知識をQ&A形式で論じます。
健康情報等の取扱い、復職判定基準、ハラスメント、パーソナリティに問題を抱える労働者への対応方法など、多くの論点に触れる予定です。
1 想定事例と設問の紹介
2 設問への回答例の解説
2.1 裁判所の筋読みについて
2.2 回答例
回答例(1)XがY1を相手方として、雇用契約上の地位確認請求訴訟を提起したら、認容されるか。根拠と共に述べて下さい。
回答例(2)XがY1を相手方として、問1の請求とあわせて賃金や損害賠償の請求訴訟を提起するとすれば、どのような法的根拠によるか、また、その請求は認容されるか。根拠と共に述べて下さい
回答例(3)文中の下線部分に示された以下の行為は合法か。根拠と共に述べて下さいY1が、採用応募者であるXに、直近の健康保険の利用歴と国公立病院での健診結果を提出させたこと。 大学生時代の通院歴とうつ状態の既往歴を、Y1に提出したエントリーシートの既往歴欄に記載せず、採用面接で既往歴を尋ねられた際にも秘匿したこと。③勤務先のNPO法人のパソコン内の保存されていた男性職員の個人情報や、風俗サイトへのログイン情報などを探し当て、内容を抽象化して、職員内での噂となるように、複数人に個別に伝えたこと。 ④上司Y2と同僚Y3がXを無視し始め、団体が主催する懇親会等の行事にXを呼ばず、その懇親会の席で、Y2Y3共に、「Xにはぜひ辞めてもらいたい」と発言したほか、他の職員5名に、「Xとは関わるな」、などと個別に伝えたこと。 (1)Y1らがXへの言動につき、遺憾の意を表明すること、(2)同じく再発防止策を講じること等を条件とする裁判上の和解の後、Y1の職員の殆どがXに口をきかなくなり、上司も殆ど仕事を与えなくなったこと。 Xが参加しないY1の職員会議で、Y2が、Xにつき、これまでの行動を整理したメモを参加者に示したうえで、「人間性に問題がある」、「足手まといなので、退職させて欲しい」などと述べたこと。 Y1の職員会議に参加していたY3が、Y2がY1を誹謗した内容をXに伝えたこと。Xの復職申請に際して、Y1が、就業規則上の根拠規定なく、産業医面談を受けて復職可の判断を得ない限り復職させられないと伝え、産業医面談を半強制したこと。 ⑨産業医Eが、Xと面談したところ、Y1らへの不信と不満を強く述べたことから、「もう少しあなたにあった居場所を考えてみては?」、「少なくとも、ここではないと思います」、と伝えたこと。 ⑩産業医Eが、Xの復職の可否を判断するための面談の後、Y1からの照会に応じ、Xの同意なく、面談の記録内容を示して情報交換を行ったこと。 Y1が、Y1が定める傷病休職期間の満了が近づいていた正社員のXに対して、期間半年間の有期契約、完全請負制、在宅労働で雇用を継続する選択肢を示したこと。
回答例(4)産業医の復職不可判定・意見を根拠に、Xが産業医Eを相手方として、傷病手当金の不支給分(支給可能性のある18ヶ月分のうち既支給の8ヶ月分を除いた分)を請求する訴訟を提起したら、認容されるか。根拠と共に述べて下さい。
回答例(5)本件のような事件の有効な予防(未然防止・事後対応)策について述べて下さい。
講座4
精神障害者・難治性身体疾患り患者の復職と法~メンタルヘルス不調者のテレワークへの復職の可否を含む~
もともと仕事ができなかったり、周囲に迷惑をかけていた労働者が病気で休職した後、 健康状態とは別の理由で復職を拒否され事件化するケースが増えています。そこで、本講演では、生まれや育ち、精神疾患など様々な背景があって、周囲を悩ます労働者の復職判定に関する裁判例を踏まえ、概ね以下の順で適正な対応法を論じます。
1 主に私傷病者に対する国の対応の変化と産業保健者に求められる役割
2 司法の復職判定基準
2.1 職種非限定契約の場合
2.1.1 代表例と補充例 a. 代表例:片山組最判(片山組事件最1小判平成10年4月9日労働判例736号15頁(賃金等請求事件、確定)) b.基準(3)につき、(片山組最判の示唆通り)労働者に特定と申出を求めた例c.基準(3)の特定を使用者に求めた例 d. 障害者雇用促進法上の合理的配慮の趣旨を体現したと思われる例e. 片山組最判3基準に沿いつつ、精神疾患者につき、復職可能性を否定した例f. 片山組最判3基準を若干アレンジしたうえ、「原職務」について解釈した例
2.1.2 補論:片山組最判の復職判定基準は、復職後も有効か
2.2 職種限定契約の場合 a. 代表例:カントラ事件大阪高判平成14年6月19日労働判例839号47頁(1審:大阪地判平成13年11月9日労働判例824号70頁)(賃金等請求事件、上告後帰趨不明)b. 東京エムケイ事件東京地判平成20年9月30日労働判例975号12頁c. ケントク(仮処分)事件大阪地決平成21年5月15日労働判例989号70頁d. 障害者雇用促進法上の合理的配慮義務の履行支援を図る指針(合理的配慮指針(平成27年3月25日厚生労働省告示第117号)第4・1(2)ロ)
2.3 両者に跨がる課題について
2.3.1 復職可能性の判断時点 a. 履行の提供」という以上、復職申出後の改善可能性より、復職申出時点での労働能力を問うべきとした例(関西電力事件大阪地裁民事調停法第17条による決定平成12年5月16日判例タイムズ1077号200頁(地位確認、賃金等請求事件、確定))b. 残業(法定時間外労働)ができなくても復職適性ありとした例
2.3.2 障害者雇用促進法との関係
2.3.2.1 身体障害の例
2.3.2.2 精神障害の例 a. 精神障害者等に厳しい姿勢を示した例 b. 疾病障害者の復職判断を性格傾向等で行ってはならないとした例
2.3.3 主治医と産業医・指定医の見解が相違した場合
2.3.3.1 注目すべき例 a. 産業医の判断の合理性を認めた例 b. 主治医の判断の合理性を認めた例 c. 大学病院の診断の取扱い
3 事件の「筋」の重要性
-全6講座のご案内-
*4/15(土):ウェビナー開催のみ、5/20(土):ウェビナー開催のみ、6/25(日):ウェビナー開催および会場開催(東京)あり
4/15(土)講座1 産業保健に関する法律論の基礎
4/15(土)講座2 産業医に関する裁判例~産業医が判例を学ぶ意味~
5/20(土)講座3 パーソナリティに偏りを抱えた労働者の労務管理と法
5/20(土)講座4 精神障害者・難治性身体疾患り患者の復職と法
6/25(日)講座5 健康情報等の取扱いと法
6/25(日)講座6 産業保健に関する政策の動向
■ 開催形式
Zoomによるウェビナー形式
■ 対象者
無料会員 / 正会員
※先着100名まで
■ 参加費
無料
■ イベントへの参加方法
本イベントはZoomを利用したオンラインイベントです。
対象会員は、ログインすることでアクセス情報をご確認頂けるようになります。
※予約は必要ありません。当日先着100名までご参加頂けます。